
「スーツの中から着るやつって作れますか?」
日々店頭でお客様に聞かれるこの質問。「スーツの中に着るやつ」で検索してもシャツの事ばかり出てきますよね…
それ、実は「ベスト」といいます。
ベストは、スーツスタイルの中でも“脇役”と思われがちですが、実は歴史的にも機能的にも、非常に奥深いアイテム。今回は、初心者の疑問に答えながら、すでにベストを知っている人にも「なるほど」と思ってもらえるような、ベストの魅力を深掘りしていきます。
ベストの起源──英国王室が生んだ格式の象徴
ベストの原型は、17世紀のイギリス王チャールズ2世が導入した「三つ揃え」のスタイルにあります。1666年、彼は派手なフランス風の服装を改め、より品格と秩序を重んじた服装として、ジャケット・ベスト・パンツの三点セットを提唱しました。
このスタイルは瞬く間に貴族階級に広まり、ベストは“礼装の象徴”として定着。フランス革命後には装飾性が減り、実用性と機能美が重視されるようになりました。
日本での定着──礼装からビジネスへ
日本におけるベストの定着は、明治時代の洋装化に端を発します。西洋文化の流入とともに、スーツスタイルが「文明開化の象徴」として広まり、三つ揃え(ジャケット・ベスト・パンツ)は格式ある装いとして受け入れられるようになりました。
特に昭和期以降、ベストは礼装の定番として定着。成人式・結婚式・葬儀など、人生の節目で着用されることが多く、「きちんとした場には三つ揃え」という認識が根付きました。ベストは“フォーマル感”を高めるアイテムとして、長らく特別な場面でのみ使われてきたのです。
しかし、平成〜令和にかけて、スーツスタイルの多様化が進む中で、ベストはビジネスシーンでも再評価されるようになります。特に以下のような理由から、日常使いのアイテムとして浸透してきました:
- 縦ラインが強調され、スタイルが良く見える
- 季節に応じた体温調整がしやすい
- ジャケットを脱いでもきちんと見える
日々様々な方を対応する中で「ベストを着ていると信頼感がある」「営業先で好印象だった」といった声をよく聞きます。
つまり、ベストは「特別な日の装い」から「日常の信頼感を支えるアイテム」へと進化してきたのです。
ベストの役割──“中から着るやつ”以上の価値
既述の通りベストには、見た目以上に多くの役割があります。
- 視覚的効果:縦ラインを強調し、スタイルをスマートに見せる
- 機能性:防寒・体温調整・ジャケットを脱いでもきちんと感を保てる
- 印象操作:信頼感・誠実さ・フォーマル感を演出できる
特にではビジネスシーンでは「ジャケットを脱いでもちゃんとして見える」という声が多く、夏場や屋内での着用にも重宝されています。
着用シーンとおすすめスタイル
シーン | ベストの効果 | おすすめスタイル |
---|---|---|
結婚式・式典 | 格式・華やかさ | 同色三つ揃え or シルバー系ベスト |
ビジネス | 信頼感・きちんと感 | 出来ればスーツと同じ生地 |
カジュアル | おしゃれ感・差別化 | チェック柄・ツイード素材など |
ベストは「着るだけで印象が変わる」アイテム。TPOに合わせた選び方が重要です。
ベスト選びのポイント──サイズ・色・素材
- サイズ感:肩幅・着丈・胸囲がジャストであることが重要。特に着丈はベルトが隠れる程度が理想
- 色合わせ:スーツと同じ生地で統一感を出すか、あえてコントラストで遊ぶか
- 素材選び:季節に応じてウール・リネン・コットンなどを選ぶと快適性がアップ
初心者にはまず「同色三つ揃え」から始めるのがおすすめです。
ベストの豆知識
- ボタンの留め方:一番下は留めないのが基本。これは乗馬文化の名残で、動きやすさを重視したスタイル
- 背中の素材が違う理由:ジャケットを着る前提だから、軽量化と通気性を重視している
- ポケットの使い方:懐中時計やチーフなど、装飾性の名残が今も残っている
こうした背景を知ることで、ベストの着こなしに深みが出ます。
まとめ──“中から着るやつ”は、スタイルと歴史を纏うアイテム
ベストは、ただの“中から着るやつ”ではありません。
それは、英国王室の格式を受け継ぎ、日本の礼装文化に根付き、現代のスタイルに進化した、奥深いアイテム。
初心者には「名前を知ること」から始まり、
すでに知っている人には「背景と意味」を知ることで、着こなしに新たな視点が加わります。
ベストのサイズについてまとめた記事はこちらから。
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